佐久間考

あまり人に読ませる気がない

反省文

今日は誕生日であった。

 

しかし、この佳き日に反省すべきことを山ほど抱えてしまったので懺悔していこうと思う。

因みに台詞も時間もなんとなくの朧げな記憶である。間違っている可能性は大いにあるが見逃してほしい。

 

8:25

いつもより少し早めに出勤した私は、いつになくやる気を漲らせていた。誕生日。夜になればケーキを取りに行くことになっている。20:50には東京に向かうバスに乗る。19時くらいにはなんとしても帰らなければ。やることはたくさんだが、なんとかなるだろう。さてこのなんとかなるだろうという油断が命取りなのだが、この時の私は知る由もない。

 

11:00

今日送る分のサンプルを作っていると、「展示会のポップアップカードのサンプルはいつできますか?」と取引先からメール。おいおい聞いてないぜ。2人から同時に同じ内容のメールが来たものの、2人の言っていることが違う。せめて意見は統一して。

とりあえず来週の展示会に間に合わせるためにサンプルの資材を集めるものの、いくつか足りないパーツがある。センターの方に行ってしまっているのかもしれないので連絡してみる。

 

12:00

午前中にすると思っていた加工出しは決まっていなかった。不覚だった。まあ準備をしておいて損はないだろう。(実際この後助けられることになる)午後はサンプル作成と棚卸し。加工出しも午後に入るかもしれない。なかなかハードなスケジュールになってきた。残業は長引くかもしれないが、19時半くらいには帰りたいところだ。

サンプルの資材はやはりセンターに渡してしまっていた。貰う約束を取り付けてなんとか一安心。パーツを運んでくれたお二方、ありがとうございます。というか、いつも助けられている気がする。

 

14:00

来週の展示会までに作ればいいと思っていたサンプル(しかも結構複雑)を急遽作らなければならなくなる。この辺りで暗雲が顔を覗かせてきていた。営業のS田さんに手伝ってもらいつつ、自分は他のサンプルを作成。

 

16:00

昨日送ったサンプルに不備が発覚。箔の色が間違っていた模様。S田さんに尋ねたところ、なんとか4/3の展示会に間に合わせる必要があると。こちらにあるものは全部箔押ししてしまっているので、印刷屋さんに在庫がなければ間に合わせるのは無理そうだ。どうすべきか迷っていると、徐に箔の場所を蛍光ペンで塗り始めた。ふざけているのかと思ったら普通に真剣だった。笑ってごめんなさい。でも黄色の蛍光ペンで塗っても銀色が金色にはならないと思う。因みに箔色違いはもっと怒られてもしょうがない事件だそうだ。ごめんなさい。

(箔押し屋さんに話を聞いたところ、どうやらS田さんと箔押し屋さんの間でアンジャッシュ現象が発生していたようだった。お互い長い付き合いだからこそかもしれない)

 

17:00

黄色い蛍光ペンで金色にするのは無理だったが、ホロの模様は割と綺麗に出たため、絵の具か他の色のペンならどうにかできないかと、部長に打診。絵の具は残念ながらストックがなかったが、百均に行ってそれらしいものを買ってきてくれるとのこと。御礼を言って自身は棚卸しに向かう。

 

17:30

棚卸しの途中、S田さんがやってきた。印刷屋さんに箔押ししていない在庫があったため、明日渡して箔押ししてもらうことに。ここで部長の百均が無駄になった(失礼)。申し訳ないと思いながら報告に行くと、一生懸命箔に色塗りしてくれていた。めちゃくちゃ謝った。「どうせ僕だから…」部長は拗ねた。ごめんなさい。

 

18:00

加工先が決まったとの事で慌てて資材を準備。午前中ある程度やっといてよかったが、午前中もっと入念に準備していればもっと早く終わったなと思う。あと全数で準備していたのに半分くらいしか出さないことを忘れていたのが痛かった。かなり時間を取られる。一緒に資材を分けてくれたSさん、いつもごめんなさい。ありがとうございました。

 

18:30

棚卸しの途中だったのでそちらに戻る。バーコードシールを懸命に数えていたものの、予備は数えなくてよいことに気づき全てのやる気をなくす。棚卸し、終わってないです。ごめんなさい。しばらく資材の在庫は動くことないので4月1日にすることをどうかお許しください。

台紙は動いた商品が2点しかなかったのですぐに終わった。

 

19:00過ぎ

なんとか事務所に戻ったものの、自分の机の上の酷さに愕然とする。帰っていく先輩たち。S田さんに準備だけしてもらっていたものの、バラバラのサンプル資材。同期からのプレゼントのお菓子。いろいろな意味で涙が出そうになりつつ、サンプルを作成しようとする。

私がケーキを取りに行くことを知っていた隣の先輩が大丈夫?と聞いてくださった。正直大丈夫ではなかったので正直に答えた。ついでにバスに乗らなければならないことも喋った。残っていた女性陣と本部長が集まってきてこいつはヤバイとざわざわし始める。

「サンプル明日私たちが作るよ」

「見本があれば…」

「指示書みればいけるでしょ」

女神か?少なくとも私の目には女神の集まりに見えた。いつもあまり関わりのない方も手伝ってくれるようだった。ありがとう、そしてごめんなさい。

 

不意に携帯が鳴った。ケーキ屋さんだ。

「あの、ケーキ取りに来るんですよね…?」

「アッハイ…すみません、まだ仕事終わってなくて…8時には取りに行くので…」

電話を切ると事務所は生温かい空気で満たされていた。

「ケーキ屋さんはどこなん?」

「駅前です…」

「帰ってケーキ取りに行くのはもう無理やないん?」

「今からケーキ取りに行くよ…〇〇さん(課長)が!」

課長をパシリに使う斬新な意見はいつのまにか押し通された。課長は突然の指名に冗談か本気か考えていたが、本気の空気が流れ出すと「帰るついでに取りに行って持ってくわ」と颯爽と事務所を出ていった。いい人か。このままだと女性のケーキを勝手に取りに来た怪しいおじさんになってしまうので、ケーキ屋さんに伝えた。

「私は何をすればいいんでしょう…」

「日報書いて帰りな!」

情けなくも困惑する私の背中を先輩の言葉が力強く押してくれた。日報を書いて、すみませんすみませんと平謝りしながら帰宅した。しばらくしてケーキ配達人(課長)が来た。もちろんうちがどこにあるか知らないので、曖昧な説明を頼りに近くまで来てもらった。ケーキを私に渡してまた颯爽と走り去っていった課長、大変お手数おかけしました。ありがとうございました。

 

さっき隣の先輩からLINEが来た。

「バス乗れた!?ケーキ食べれた!?旅行楽しんできな〜、自分へのご褒美!」

こんな後輩にこんな優しい言葉をかけてくれるなんて、まさに女神様である。

私にご褒美を貰う資格はないが、せめてもの償いにお土産くらい買っていこう。

 

バスには乗れたしケーキも食べた。ケーキは食べきれずに保冷剤とともにここにあるが。私の胃袋なら多分大丈夫。多分。

 

というわけで今日の私の計画は完璧な失敗に終わり、いろいろな方々に謝りながら1日を終えた。
計画といっても読みが今日食べたケーキよりも甘々であったことは想像に難くない。想像というのは私がいまいちその甘さを理解できていないからである。この1週間、今日の為に残業に残業を重ねてきたにもかかわらずこのざまだ。周りの先輩方に嘲笑されているような幻想を抱いているが、実際は皆さん優しい方なのでそっと手を差し伸べてくれるのだ。本心ではどうか知らないが。(被害妄想癖があるのも許してほしい。)

今ここにいるのは手伝ってくださった全ての方々のおかげである。正直1人ならすべてに絶望していたし、バスにも乗り遅れていた可能性は結構高い。感謝と謝罪の気持ちを胸に、私はロッテ開幕戦へと向かうのだ。